社長対談

荻野 正昭
ISIグループ代表
エバコナ語学学校校長 マクリーンえりこ氏
ニュージランド エバコナ語学学校校長

「自立する」ということ。
ISIのニュージーランド高校留学プログラムの渡航先の一つ、エバコナ語学学校校長マクリーンえりこ氏とISIグローバル常務取締役(当時)の荻野正昭の対談をご紹介します。 ※この対談は2011年11月に行われました。
壁を作ってしまう日本人
荻野 先生の長年の現場での経験を交えてお話をお聞かせいただきたいのですが、まず日本人留学生全般に見られる傾向というようなものがありますか?
校長
弊校では、日本以外にもヨーロッパ、韓国やタイからも学生を受け入れていますが、やはり馴染むのに一番時間がかかるのは日本人です。日本人の場合は英語が得意でないということに加えて、壁を作ってしまう傾向があります。コミュニケーション下手なんですね。
私がニュージーランドの高校で留学生を担当していたときも、日本人の留学生は脱落してしまうことが多かったです。日本の文化はとてもユニークなので文化の壁が厚い。ニュージーランドの文化とのギャップが他の国に比べて大きいことが壁を厚くしている理由だと思います。
自主性を育てるNZの教育システム
校長
ニュージーランドの子供たちは小さい時から、何が得意で、何が好きかをよくわかっています。
例えば、幼稚園でも自由遊びが主です。今日は何して遊ぶか、子供が自分で考えるんですね。小学校や中学校でも子供の得意なことに焦点をあてた教育がなされています。
日本から来た学生に、「何が得意?」「何をしたら楽しい?」と聞いても、「わからない」と答える子供が多いのは、平均点以上なら親が安心するというような教育が日本ではあたり前になっているからではないでしょうか。

体験からコミュニケーションを学ぶ
校長
さらにニュージーランドの教育はコミュニケーションを大切にします。
幼稚園を見学に行ったとき、喧嘩をしている子供たちがいたんですが、先生は一切口を出さないんですよね。子供が「誰々にぶたれた」と言いに来ても、「何でぶたれたと思う?」「謝ってほしいの?どうしたいの?」と聞くんです。そして「だったらこう言ってみたら?」と子供を促して相手のところに言いに行かせる。先生は一切間に入らずに子供たちに解決させるんですね。
荻野 日本なら先生は「誰々にこういうことされて、こうなりました」という報告だけですよね。
校長 ニュージーランドでは小さいときからコミュニケーションを取ることを体験的に教えるんですよ。「僕はこれが好き」という自己主張はいいですが、人を押しのけてしまう自己主張はだめですからね。
荻野
素晴らしいですね。ニュージーランドでは小さい頃から精神的な自立を促す教育がなされているんですね。

校長 日本人の留学生はこうした文化や教育システムの違いに戸惑うことが多いので、日本人スタッフが常駐する私たちのような学校が導入をサポートしていく必要があると考えています。
具体的な方向性を示す
校長
学生に私たちが最初に教えるのは、「責任を取る」ということです。今まで親に手取り足取り面倒を見てもらっていた子供は、責任は取りたくないけど好きなことはしたいと考えます。そこで私たちは、「責任が取れないならやってはいけない」ということを繰り返し教えます。「こういったことをやってみたら?」ということは教えますが、学生の代わりにこちらが動くことはしません。特に最初の一年は、具体的な方向性を学生に示してあげることで、彼らが自立していけるように指導します。
例えば、学生が髪を染めたいと言ってきたときは、「親御さんのお金を使って染めるのだから許可を取らなければならないよ」と教えます。親御さんから許可が下りた場合は、「ホストファミリーの家の洗面所を汚さないように染めるにはどうするの?」と確認します。そして「洗面所を汚してしまったらお小遣いで弁償するんだよ」と教えます。
すごく小さいことですが、「どこに自分の責任が発生するのか」「何を親に確認しなければいけないのか」というようなことを一つひとつ生活の中で細かく教えていきます。
そうしていくうちに、日本では、「欲しい」と言えば親がお金を出してくれたり、「汚した」と言えば親がきれいに片づけてくれていたものが、留学先ではお金を使うときは使ってもいいかを親に確認し、汚したら自分できれいにしなければならないことを理解していくのです。
留学に来た当初はみんなショックを受けると思います。親なんて鬱陶しいと思って留学してきたのに、親がいかに自分の生活を支えてくれていたかがわかるんです。実家では食事も好きなものしか出ませんが、ホスト先では嫌いなものには“No, thank you. (いいえ、結構です)” 、もっと食べたければ “Can I have some more? (もう少しいただけますか?)”と言わなければなりません。
礼儀作法を新しい言葉で学ぶ
校長
言葉が不自由だから、まちがいが許されるという部分もあります。
本当は “Thank you”“No, thank you” と言わなくてはならないシーンでも、「この子は言葉がまだできないから言えないんだわ」とホストが好意的に解釈してくれて、「こういうときは “Thank you” って言うのよ」と教えてくれる。日本では「ありがとう」も言えなかった子供でも、こうして “Thank you” と自然に言えるようになってくるのです。
半年くらいすると顔つきが変わる
校長
そうした過程を経て、半年後くらいに親御さんが留学先に来てみると、子供の顔つきが変わったと驚かれることがよくあります。
子供が食事をお皿によそってくれた、食べ終わったら自分でお皿を下げてくれた、日本にいるときは我儘放題だった息子がそんなことをするのは初めて、と言って感激されるんです。
荻野 私も同じような話を耳にします。
離れるから深まる親子の絆
校長
今の日本の家庭はたいへん過保護なので、私たちは親御さんに対しても「子供から離れる努力をしてください」とアドバイスをします。
子供は、親と物理的に離れて、自分で決めていかなくてはならない、責任をとっていかなければならないという状況に追い込まれることによって、体験的に自立していくことができるからです。
荻野 私も四年間の中国留学を経験し、親に対する見方や思いが変わりました。子供の自立を通して親子関係も成熟していくように思います。今までに留学を通じて親子の絆が深まったというようなエピソードがあればお聞かせください。
校長
以前奈良から来た女の子で、受験に失敗してから一年ぐらい親と口をきいていないという子がいました。親御さんもいろいろ悩んで進学先に留学を選ばれたんですね。
留学してホストファミリーに行ってみたら、実家がいかに楽だったかがわかるんです。足りないものが出てきて困るようになる。すると親に頼みごとをしなければならなくなり、親と話すようになる。そして気が付くと親に「ありがとう」と言えるようになっているんですね。
日本の家庭の典型なのですが、父親は仕事で忙しく、大半が母親任せということが多い。でも私は、必ず父親を巻き込んでもらうようにお願いしています。
父親と母親があまり話をしていないということも多いですね。子供は母親を逃げ道にすることが多いので、「ご両親の間で結論を出してから子供に話してください」とお願いしています。
先程の奈良の女の子の場合も、留学前は子供の問題をお互いのせいにしていたご両親も、子供のことで話しをしなければいけない状況になって、とても仲が良くなったということがありました。
留学は本当の自分に出会う旅
荻野 高校三年間をニュージーランドで過ごした学生はどのように成長するのでしょうか?
校長 個人差はありますが、ニュージーランドの学校にいると「自分探し」ということに慣れてきます。日本で普通に大学に行った子供よりも、「なぜニュージーランドの大学に行きたいのか」「なぜこの学科に行きたいのか」というような目的意識が明確ですね。ニュージーランドでは様々な体験教育プログラムが実施されていますが、こうしたプログラムに参加し、厳しい課題を克服した学生は、精神的にとてもたくましく成長しています。
荻野 留学を通じて自立していく学生に期待することは何ですか?
校長
私の学校では、「自分探し」を学校の一つのスローガンにしています。日本の学生には、ニュージーランドに来たというチャンスを生かして、自分探しをしてほしいですね。
ニュージーランドでは時間がゆっくり流れています。お店は5時に閉まってしまうし、みんな早寝だし(笑)。「12時前に寝たことがない」という学生たちには、「眠れないなら自分は何がしたいのか考えてごらん」と言うようにしています。
日本では次から次にすることが与えられていて時間に支配されている状態だったと思います。子供たちは自分で考えるチャンスもないから、考える癖もついていない。質問しても「わからない」という答えがすごく多い。それでも自分で答えを考えること、自分で考えて行動すること、それが自分探しの第一歩だと思います。学生たちには本当の自分を発見できる素晴らしい空間を存分に活用してもらいたいですね。
荻野 貴重なお話をありがとうございました。現在留学中の学生や留学を検討中の学生にも、今日のお話を留学の目的や進路を決める際の参考にしてもらえたらと思います。これからもよろしくお願いいたします。
エバコナ語学学校校長 マクリーンえりこ氏
1950年、東京生まれ。大学卒業後に1年間イギリスに滞在、帰国後は海事広報協会の旬刊紙「海上の友」記者。結婚し3人の子をもうけるが、’89年に母子4人でニュージーランド(NZ)に渡り、’90年から地元の公立高校で日本語教師として教鞭をとる。2001年に退職し、高校に隣接した場所で、NZの大学や高校に留学を希望する生徒たちのための準備校・補習校として語学学校EVAKONA(エバコナ)を開校。2008年8月には共同通信社発信、日本全国34紙で掲載中の「日本遠望」でその教育活動が紹介された。
NZから電話、スカイプでの無料教育相談も受けている。